2015年から北中国、北オーストラリアの地層を対象に研究を始めました。まだ成果と呼べるものはありませんが、今後数年はこの研究もひっそりと続けていこうと考えています。
中期原生代は16-10億年前の事を指しますが、これまで「退屈な時代」と揶揄され、研究対象としての優先順位は高くありませんでした。要は化石がほとんど見つからず、変化も乏しいので、研究の動機が湧かないといった事情がありました。しかし、近年多様な化石が報告され始め、遺伝子的な進化もこの時代に起こった事が示され始め、注目を集め始めています。
中期原生代地層の中でも北中国Jixian地域の地層には化石が豊富に含まれているため、この地を地質調査地域に選定しました。まずは地層に年代を入れるべく、基盤岩、貫入花崗岩の年代を決めました(Sawaki et al., 2016)。
次に様々な層準の砂岩からジルコンという鉱物を分離し、その年代頻度分布を得ました。その結果から「北中国Jixian地域は中期原生代を通じて周囲に大陸の無く、孤立していた事」が分かりました。
藻類はシアノバクテリアに比べて光合成能力が格段に高く、中期原生代の海洋組成変化(Mo濃度の上昇)に併せてその存在が卓越したと考えられています。今後はその藻類の痕跡を堆積岩中の有機物などから抽出し、マスとしてどの程度存在していたのかを定量化していきたいと考えています。
北オーストラリアの中期原生代地層は資源探査のために掘削が数多く行われています。そのコアは研究者への貸し出しが行われており、私たちもその試料を利用しています。
【中期原生代研究に関する業績】
論文題名:New chronological constraints on Neoarchean gneisses, Proterozoic cover sediments, and Triassic granite, Jixian, China
著者名:Sawaki, Y., Li, Y., Asanuma, H., Sakata, S., Suzuki, K., Hirata, T., Windley, B. F.
雑誌名・巻・頁・発行年:Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology, 459, 182-197, 2016