伊豆-ボニン-マリアナ島弧は形成年代が若く、大陸形成に繋がる初期島弧進化を議論するうえで重要な地質証拠を提供してくれる。この島弧の北端に位置する丹沢花崗岩は下部地殻の部分溶融で形成された事が分かっている。この花崗岩を用いて、花崗岩形成時に取り込まれた岩石(源岩)を推定する事によって、若い島弧で起こる地質現象の解明を目指している。
丹沢地域(右上図)に露出する花崗岩中に含まれる苦鉄質包有岩を採取し、ジルコンと呼ばれる鉱物を分離し、年代決定を行った。その結果花崗岩(4-5Ma)よりも有意に古いジルコン(43Ma)が含まれる事を明らかにした。また花崗岩そのものから分離したジルコンの酸素同位体比を局所分析した結果(右下図)、マントル(4.7-5.9‰)よりも有意に低い分析値が得られた。周囲の岩体の年代や岩石種を考慮すると、このような低い酸素同位体比を説明するためには熱水変質を受けた斑レイ岩(海洋地殻中部に存在)が源岩として含まれる必要がある。これらをまとめると「43Maに形成された海洋地殻の断片が(下図A)、花崗岩形成時(4-5Ma; 下図B,C)に、下部地殻として存在していた」事が新たに明らかになった。
【花崗岩成因論に関する業績】
論文題名:Geochemical characteristics of zircons in the Ashizuri A-type granitoids: An additional granite topology tool for detrital zircon studies
著者名:Sawaki, Y., Suzuki, K., Asanuma, H., Okabayashi, S., Hattori, S., Saito, T., Hirata, T.
雑誌名・巻・頁・発行年:Island Arc, 26, e12216.
Open access; http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/iar.12216/full.
論文題名:Ancient oceanic crust in island arc lower crust: evidence from oxygen isotopes in zircons from the Tanzawa Tonalitic Pluton
著者名:Suzuki, K., Kitajima, K., Sawaki, Y., Hattori, K., Hirata, T., Maruyama, S.
雑誌名・巻・頁・発行年:Lithos, 228-229, 43-54, 2015
論文題名:Zircon U-Pb dating from the mafic enclaves in the Tanzawa Tonalitic Pluton, Japan: Implications for arc history and formation age of the lower-crust.
著者名:Suzuki, K., Yamamoto, S., Sawaki, Y., Aoki, K., Omori, S., Kon, Y., Hirata, T., Li, Y., Takaya, Y., Fujinaga, K., Kato, Y., Maruyama, S.
雑誌名・巻・頁・発行年:Lithos, 196-197, 301-320, 2014