2017年の研究成果を簡潔に紹介します。

【更新日】2018/03/28


筆頭著者の研究

Sawaki et al., 2017a

 ガボンの前期原生代地層への年代制約を試みた研究です。FA, FBユニットと呼ばれる地層に貫入している花崗岩からジルコンを分離し、U-Pb年代測定を行いました。どのジルコンにもcommon Pbが相当量含まれていたため、放射改変起源と初生的に含まれていたPbの混合を仮定し、貫入花崗岩の年代を約21.9億年前と推定しました。この結果により、FBユニットに含まれる真核生物(と解釈される)化石の出現は従来考えられていたより約1億年古く、前期原生代全休凍結の直後であったことが明らかになりました。



Sawaki et al., 2017b

 花崗岩は水惑星地球を特徴付ける岩石です。地球表面において、海底の石の代表格は玄武岩、大陸の石の代表格は花崗岩です。

 花崗岩はその化学組成等によってI,S,M,A-型の4つに分類されています。このうちA型花崗岩は(澤木にとって)他とは成因が全く異なり、I,S,M型花崗岩がプレートの沈み込みによって形成されるのに対し、A型花崗岩は沈み込みが無くても形成されます。岩石の分類に利用される化学組成の違いが、岩石中のジルコンという鉱物にも反映されているか調べるために足摺岬の花崗岩を使って、ジルコンの化学組成を調べました。その結果、A型花崗岩中のジルコンは岩石同様に特徴的なNbやTa、Eu元素濃度を持つ事が分かりました。この事がなんで大事かは下記論文を読んで下さい。



共著の研究

Edou-Minko et al., 2017a, b

 ガボン共和国の前期原生代地層Franceville超層群からは最初の真核生物化石とされる構造が見つかります。この研究では先行研究よりも北東側のOkondjaという別の堆積盆地の地層から、新たに見つけた化石を報告しています。先行研究で報告されていたのは黄鉄鉱で構成されていましたが、この地の化石は珪質で、形がハンバーガー状です。真核生物と解釈するには大きすぎる気もしますが、22億年前の何かしらの痕跡であると考えています。



Asanuma et al., 2017

 イギリスの原生代末期~古生代にかけての造山運動の年代を白雲母のK-At年代やジルコンのU-Pb年代から見積もりました。その結果、この時期の造山運動は5.7~5.3億年前、4.77億年前付近の大きく2つの時期に分けられる事が明らかになりました。



Ueda et al., 2017

 超塩基性岩を流れる熱水中では鉄の酸化と共に水の還元が起こり、水素などの還元的ガスが高濃度で含まれるため、この熱水系は初期生態系を考える上で重要です。初期地球のような二酸化炭素濃度の高い環境下での橄欖石(San Carlos olivine)の水素発生効率を300℃における熱水実験によって確かめました。実験の結果、二酸化炭素が無い環境下に比べて水素発生速度は減少し、鉄はMg-炭酸塩鉱物の中に取り込まれていました。300℃の熱水中では、本来水素発生に寄与するはずの鉄が炭酸塩鉱物に取り込まれてしまい、熱水中での鉄の酸化が起こらず、水素発生速度が抑えられる事が明らかになりました。



Komiya et al., 2017

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